前作のパート1が非常に面白かったホラー映画『ドント・ブリーズ』の続編を観た。

 

 
盲目の老人の家に忍び込んだ若者たちが思わぬ反撃に遭い恐怖を味わうさまを描いて全米スマッシュヒットを記録したホラー『ドント・ブリーズ』の続編。

前作でフェデ・アルバレス監督とともに共同脚本を手がけたロド・サヤゲスが監督。

前作のアルバレス監督も製作・共同脚本として参加して、『死霊のはらわた』シリーズなどのサム・ライミが製作に名を連ねる。

盲目の老人役をスティーブン・ラングが続投。

ブレンダン・セクストン三世、マデリン・グレイスらが出演。

2021年製作／98分／R15+／アメリカ
原題：Don’t Breathe 2
配給：ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

 
盲目の老人の家に強盗に入った若者たちが返り討ちに遭った惨劇から8年。

老人はある一人の少女を大切に育て、二人だけでひっそりと暮らしていた。

ある夜、少女を狙って謎の武装集団が家に押し入り、少女を連れ去ろうとする。

危機が迫った彼女を巡り、老人の狂気が再び目を覚ます。

 
強盗に入った先の家の住人である盲目の老人がめちゃくちゃ強かったという前作は、ホラー映画としても十分に楽しめた。

老人は元軍人で盲目であるが、自身の家なので部屋の間取りや物の配置などを把握しているため、強盗にとっては電気を消されれば完全に不利な状況に陥る。

前作はそんな老人の戦闘力の高さと、さらに自分の子供を産ませようと地下室で女性を監禁しているという老人の異常性からの恐怖も描かれていた。

パート2になる本作では、一体どんなホラーを見せてくれるのだろうか？

そんな期待をして観てみたが大事なホラー要素は欠けて、すっかりアクション映画になっていたのだ。

確かに前作で老人の素性がバレてしまったので、本作では老人に対する恐怖心も薄れてしまう。

何者かが襲ってくるのがわからなかった『エイリアン』はホラー映画だったが、素性がバレた後の『エイリアン2 』はやっぱりアクション映画になっていたものだ。

戦闘力が高いキャラだとホラー映画の続編として、アクションに移行してしまうのは、どーしても逃れられない壁である。

『13日の金曜日』のジェイソンに関してはシリーズを通して「若者たちが集まっているところをジェイソンが襲う」という図式に当てはめては、ある意味同じことを繰り返しているだけなのだ。

ジェイソンとドンパチを繰り広げるアクション映画にはならない。

『ドント・ブリーズ2』にホラーを期待していた方は、残念な気持ちになったのではないだろうか。

本作のホラー要素といえば、実の母親が自分の延命のために娘の心臓を移植しようと企んでいたという不気味さである。

老人側ではなく相手側にホラー要素を転換させて、何故か老人がそこに正義のヒーローかのように挑んでいくのである。

殺人鬼であったジェイソンが正義のヒーローになってしまったら、ホラー映画は破綻する。

ツッコミどころとしては「娘を連れ去ったその日の夜にいきなり手術するかね？！」という点で、「別に数日後経ってからでもイイだろが！」と思わざるを得ない。

娘を連れ去った、その日の夜に手術を決行しなくてもイイではないか。

心臓移植の手術直前に老人が救出に現れた方がスリリング感が増すので、仕方ないのだが。

老人が自分の犬を惨殺されて相手側の犬を相棒にして乗り込んでいくシーンは、まさに『ジョン・ウィック』である。

最強老人だった彼がボコボコにされてしまう姿も『ジョン・ウィック』だった。

最後には女の子に助けられた老人であったが生き絶え絶え命尽きたように見えたところで、犬が老人に駆け寄って来たシーンでは「生存」の可能性が見えた。

老人が死んでしまったようにも、実は生きていたというのだという、両方の解釈が出来る終わり方である。

果たして『ドント・ブリーズ3』が制作されるかは現時点では不明だが、その動向は今後も追いかけていきたい、といったところで「カット、カット」。