宮部みゆき原作の『ソロモンの偽証 前篇・事件』を観たのだ。
『ソロモンの偽証 前篇・事件』 演技達者な無名の生徒たち。 暴力ばかりの治安の悪い区域。 監督:成島出 出演:藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈 |
直木賞ほか多数の文学賞を受賞するベストセラー作家の宮部みゆきのミステリー巨編『ソロモンの偽証』を映画化した2部作の前編。
『ソロモンの偽証』は「小説新潮」で9年間にわたり連載された。
『ソロモンの偽証』
宮部 みゆき (著) |
『八日目の蝉』の成島出が監督を務める。
1万人の応募の中から、物語の中心となる12人をはじめとした中学生キャストをオーディションで選出。
新人女優・藤野涼子は、本作での役名をそのまま芸名に女優デビュー。
2015年製作/121分/G/日本
配給:松竹
1990年12月25日のクリスマスの朝、雪に覆われた中学校の校庭で2年A組の男子生徒・柏木卓也が屋上から転落死した遺体となって発見され、警察は自殺と断定する。
しかし転落死の現場を目撃したという者からの告発状が放たれ、不良生徒として知られる大出俊次を名指しした殺人の告発状が届く。
マスコミの報道もヒートアップして、さらに犠牲者が続出。
遺体の第一発見者で2年A組のクラス委員を務めていた藤野涼子は、柏木の小学校時代の友人という他校生・神原和彦らの協力を得て、学校内裁判を開廷し真実を暴き出そうとする。
前・後篇と分かれた作品は観ることに躊躇してしまうのだが、岡田斗司夫さんのYouTubeで本作をベタ褒めしていて無性に観たくなったので観ることに。
「自殺」か「他殺」かという簡単な設定ではあるが、嘘ばかりの大人たちと、何事もなかったかのように素知らぬ顔で学校生活を送っている嘘ばかりの自分たちに怒りを覚え、女子生徒が真実を追求しようと立ち上がる一味違った物語だ。
いじめの現場を目撃しながらも止めに入ることが出来なかった女子生徒の藤野さんは、亡くなった柏木君に言われた「見て見ぬフリする口先だけの偽善者が一番悪質だ」という言葉がいつまでも深く突き刺さる。
それにしても、このいじめの様子がメチャクチャ酷い。白昼堂々と路地裏でもなく人通りの多そうな場所で(何故か、全然人が通らないのだが)、女の子二人が男子生徒三人にボッコボコに暴力を受ける。
大声を出しても誰も現れる気配がないので、相当治安の悪い区域ではないだろうか。
・不良の大出君の父親もあり得ない程に暴力的で、自分の奥さんを思いきり蹴飛ばすDV野郎。
・担任教師の隣人の男も自分の奥さんに暴力振るいまくり。
・更には教師たちまでもが暴力で生徒を制圧しようとする。
何とも治安の悪い区域である。
一発殴っただけで、すぐに口から血を垂らす人たちも不思議だが。
本作で最高に良かったのは松子ちゃんだ。いじめを受けながらも明るく素直に笑顔でいる松子ちゃんのキャラが最高に良かった。
同じくいじめを受けていた樹里は陰湿で、友人であるはずの松子ちゃんをいじめている。そんな樹里も非常に良いキャラである。
無名の生徒役の子供たちが皆、すこぶる演技達者で作品の質を格段に上げている。
本作では何故か、ところどころで突然「ホラー」的な演出が訪れる。
・担任教師の隣人の女性が額から血を垂らしながら、這いつくばりながら部屋に戻る恐怖のシーン。
・探偵に写真を撮られた隣人女性の背後に浮かび上がる柏木君の顔(担任教師の妄想)。
・亡くなった松子ちゃんのショックで、保健室で泣いているか笑っているかの不気味な樹里。
・真っ暗闇の中でマスコミに情報を送ろうとワープロ打ちしている樹里の背後から、突如として顔を出す母親。「あんた何やってるの?!」、ひゃ~っ!!!
後篇は「裁判」とのことだが、後篇を楽しみに観よう。
それではまた後篇でお会いしましょう、といったところで「カット、カット」。
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