猿を画家が描く時、猿を猿そのものとしての被写体を描くことはもちろん、猿を擬人化して描くこともある。
特に猿は擬人化しやすい動物ではあるが、画家の持つ発想力と技術が合わさることで非常に面白おかしい作品になる。
今回は画家の描いた世にも個性的な『猿』の絵画を紹介させていただく。
ガブリエル・フォン・マックスは、猿が好きで猿を沢山飼っていたという。
猿を描いた作品も多く、この『美術鑑定家としての猿たち』は、猿が美術批評をしているのだ。
猿が集まって見ている先にあるのは、どんな絵が描かれているのかわからないが額縁だけが見える。かなり狭い空間に敷き詰められた猿たちは前のめりになって絵を見ているが、よそ見をしている猿もいる。
中央正面の猿に至っては、「見下ろすかのように、こっちを見ているではないか?」
絵を見ている猿と、その猿の絵を見ている人間、そしてその人間を見ているかのような猿。僕には「猿が人間を鑑定している」ようにも見えるのだ。
ついには猿が画家にまで扮してしまった。
これぞ猿マネというべきか、まるで大先生画家のように絵を描いている。
「芸術は自然の猿マネ」というメッセージが込められている。
ちなみにコンゴという名のチンパンジー画家は実在していて、「サル界のセザンヌ」と呼ばれており、2005年には3点もの作品が約290万円で落札された。
400点ほどの作品を描き、ピカソもアトリエにコンゴの絵を飾っていたという。
歌川広重の描いた『猿』。
桜舞い散るところに猿というのは、風情があっていいものだが、この猿はどうしたことか空を見上げて睨みつけている。
紐につながれていることへの不自由さからの怒りなのか。
ひらひらと桜の花びらが散る美しさと対照的な猿の顔が、この絵の面白さである。
広重決定版: 没後160年記念 (別冊太陽 日本のこころ 265)太田記念美術館 (監修) |
猿の足元には水辺があり、猿の手には木の枝、釣りをしているものと思われる。猿本来の野生さと、擬人化をミックスさせたような作品である。
熱帯林での猿は、大きく鮮やかな花々に囲まれてのんびりとした平和な生活が感じ取れる。
眺めているとリラックス効果がある絵だ。
アンリ・ルソー 楽園の謎
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2019年に約13億円で落札されたバンクシーの絵。
チンパンジーに占拠されたイギリス下院が描かれている作品は、横幅4メートルにもなっていて2009年に制作されたものである。
個人的にかなり好きな作品。
予想落札価格よりも5倍以上の価格がついて、バンクシーはインスタで、「バンクシーの絵画で一番高い値がついた」、「自分で所有していなかったのは残念だ」と反応したのだが、僕はこの作品は、もっと高値で落札されてもいいと思っている。
描き込まれた猿の数や建造物、英議会の様子など、かなりの労力がかけられている。
それでも13億円という価値が付くのなら、労力なんて安いものだと思うかもしれないが、作者は人気のバンクシーである。
しかもストリートアートを手がけるバンクシーの作品を考えれば、この『英議会』はかなりの大作である。
ちなみにバンクシーのストリートアートでの猿は下の絵だ。
ストリートアートでの価値も高いバンクシーが手がけた『英議会』は、僕は50億円以上の価値があると思うが、そんなカネは僕にはない。
金利なしの毎月1万円ずつのローンで50億円を支払おうとしても50万ヶ月、ということは約41666年かかる。僕がバンクシーの絵を50億円で購入すると、約41666年かかるのだ。毎月の支払額が少なすぎるという見解もあるが、その件につきましては41666年後に釈明させていただきます。
バンクシー アート・テロリスト毛利 嘉孝 (著) |
Photo by Ahmed Zayan on Unsplash
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