一流の演出家・蜷川幸雄が何と「四谷怪談」を演出していたと知ってDVDを購入して観たのだ。
『四谷怪談』
演出:蜷川幸雄 |
興味深い「四谷怪談」を題材にした舞台なのだが少々気になる点が。公演を録画したものだから致し方ないが、どうも台詞が聴き取りづらい。しかも江戸時代の物語なので台詞回しも現代の言葉遣いではなく、ただでさえ聴き取りづらい台詞回しの上に難しい言葉が物語に没入しづらかった。
しかも出演者が多く誰が誰かを認識するには難しく、せめて出演者を少人数に絞っていれば脳内処理も追いつく。
広末涼子、竹中直人、高嶋政伸、次から次へと著名人が舞台上に現れるのは有難いサービスではあるが、前半は何が起こっているのかよく分からない状態であった。
目まぐるしくスピード感ある展開で繰り広げられた舞台は台詞を追いかけるのが精一杯で、それこそが蜷川幸雄の狙いではないかと思える。それぐらいに「じっくり聞かせよう」ではなく、目まぐるしく物語が進んで多くの出演者が登場するのだ。
蜷川幸雄の演出だけあって役者は皆気合が入っている。それは過剰なぐらいに気合が入っているようにも見える。
プロの本気合戦は見応えあるが、観客も視聴者も緊張感に力んでしまうのは否めない。
それでも怒涛の如く繰り広げられる台詞の応酬は流石に凄い。
緊張感と細部までにこだわった演出に目を奪われるのは確かだ。凄ければ凄い程に「決められた台詞」を喋っているようにも感じ取れる。
美術セットは回転式で舞台が場面転換して、「カネかかっているなぁ」と作り込まれた美術セットに目を奪われる。
4時間近くにも及ぶ物語で前半の物語が長く感じ、お岩さんが亡くなってしまうまでに2時間半近くも経過したのだ。
後半はお岩さんの怪奇現象が巻き起こるかと思えば、お岩さんが幽霊となって暴れ回るのは残り15分。
もう少し物語を短くして簡潔に見せて欲しかったと言えば、「何も分からないヤツが」と反論されそうだが、何も分からないヤツにも飽きさせない物語ではなかった。
演出の凄さや美術セットの豪華さ、役者の演技力も非常に素晴らしいのに、面白いとは言い切れない作品。
DVDでの台詞の聴き取りづらさが一番ネックだったのかもしれない。
内容が聴き取れないままの物語が4時間にも及ぶのだから。
「四谷怪談」の物語をもう一度理解したいとの想いと、蜷川幸雄演出の舞台を他にも観たいと思ったことは事実だ。
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