花というのは、そこにただ咲いているだけで人の心を魅了する。
一輪の花、花束、花瓶の花、草原に咲いた花、どんな状況に置いても花そのものがアートのように存在していて、画家たちの心を捕らえて離さない。
画家たちは花を描く。今、目の前で咲いている美しさを絵筆に乗せてキャンバスの中へと生け捕りにするのだ。
素晴らしき『花』の作品は、鑑賞する者の心の中にも無数の花々を咲かせてくれるものである。
今回は『花』をモチーフに描いた個性的な絵画5点を厳選して紹介させていただく。
1836-1904年、フランスで活躍したサロン画家である。
フランスの画家であるがイギリス滞在中に「花の画家」として名を馳せることになる。
ラトゥールの描いた花があまりにも美しく「薔薇を描かせたらラトゥールの右に出る者はいない」と言われ、実際の薔薇に「ファンタン・ラトゥール」という名前が付けられたほどだ。
確かに息を呑むような美しさである。花びら一枚一枚に質感があり、触れると花びらそのものの感触がありそうなほどの錯覚を起こすのである。
女性を花と比喩するならば、頭上にある美しき花々と右手に抱えられた花束もまた、『女庭師』である女性のように華麗で美しい。
花と女性のふたつの美しきものを掛け算することで、どちらの良さも際立つ。
薄暗い背景に色とりどりの鮮やかな花々は心に灯を与えて、花のまわりを飛ぶ蝶は平穏な優しい気持ちにさせてくれる。背筋を伸ばし無表情に見つめる女性は、日常から花を扱う庭師という仕事に誇り高き姿勢を感じ取れるのだ。
これぞ「和」の魅力。
風に揺られる花びら一枚、葉っぱ一枚の描写に北斎の職人技が見える。
可憐に舞う蝶が美しき牡丹の花に留まろうとしている瞬間を北斎の目は見逃さない。
単一色でムラなく摺られた背景と、北斎の構図、巧みな技術。無駄なく描きこまれた「和」の職人芸である。
北斎の花 (1)河野 元昭 (著) |
色んな花々が花瓶におさめられているが四方八方に花々が咲き乱れている。
咲き乱れた花々が見事な構図でキャンバスの中に描かれていて、蝶もかたつむりも「集まれ!」と言った具合に、作者の動植物たちへの愛情が感じ取れる。
豊かな色彩と精密に描写された作品は、花の一本一本が細部まで活かされており、卓越した技術を絵筆に乗せて躍らせているのだ。
花をモチーフにして、これほどまでに奇想天外な発想で面白い作品を制作することに先ずは感服する。
何故、このような絵を描こうと思ったのか?その動機が気になるところだ。
花瓶に活けた花を描く静物画を描くことは多くの絵描きがすることであるが、花をモチーフにユニークな作品を描くオリジナリティーは誰の目にも留まる。
もしかすると、そういった策略があったのかもしれない。
アルチンボルドは植物だけではなく、野菜や動物をモチーフにして多くの「人物」を描いている。
もちろんデタラメに並べるだけでは、このような絵は描けない。
緻密に計算された配置と色彩、そして類い稀な芸術的感性によって生み出された傑作なのである。
アルチンボルド アートコレクション
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Photo by Annie Spratt on Unsplash
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