世田谷文学館で開催されている『あしたのために あしたのジョー!展』に、明日行こうと思っていたが、昨日のこと
京王線の芦花公園駅南口を出て一本道の道路沿いを歩いていけば、いともたやすく辿り着くことが出来るのだ。
決して泪橋を渡ることなく、『あしたのジョー!展』が開催されている世田谷文学館の前に僕は対峙した。
世田谷文学館は、5年ほど前に『浦沢直樹展』で訪れたことがある
『浦沢直樹展』は見渡す限りの生原稿の嵐で、ぶったまげたものだ。
『あしたのジョー!展』はショーケースの中に、めちゃんこ貴重な
それは、まるで職人の一品料理が並べられているかの如く、その絶
『あしたのジョー』は僕の人生においても大きな影響を受けた漫画だ。
矢吹丈の生き様は少年時代の僕の心を熱く焦がせた。
喧嘩に明け暮れていたジョーが、ボクシングに出逢い、その青春を、その人生を、リングの上に懸けるのだ。
ちばてつやさんの描いた『あしたのジョー』の生原稿をマジマジ見ていると、単純に「絵、上手いなぁ~」と思った。コミックで読んでいる時は、さほど気にせずに読んでいたが、生原稿ではプロの漫画家の職人技がそのエネルギーと共にほとばしっている。
『あしたのジョー』はとにかく心に残る名シーンが多い。
その名シーンをしっかりと集めて構成されている今回の展示会は、あまりにも贅沢な空間である。
ジョーのライバルである力石徹との名シーン。過酷な減量を経て、プロのリングの上でジョーを叩きのめした力石徹の「おわった・・・なにもかも・・」と、心の中で呟く表情は地獄を闘い抜いた男の何とも言えない恐ろしく読者の脳天を痺れさせるほどの形相だ。
そんな生原稿と、ジョーとの死闘の後に亡くなってしまった力石徹の、ファンの間で漫画を飛び出して現実世界で実際に行われた告別式の新聞記事。
丹下段平、白木葉子、ドヤ街の人々、マンモス西、カーロス・リベラ、ホセ・メンドーサ等、数々の魅力的なキャラクターと、数々の名シーンを生んだ『あしたのジョー!展』に並べられた生原稿は、狂おしい程に、異常な熱気を放っている。
梶原一騎先生こと高森朝雄先生原作の生原稿も展示されていた。
原稿用紙に手書きで走るように書かれた文字は、物語が楽譜のような旋律を奏でて、踊っている。目の前に情景が浮かぶ程の文章は迫力と情熱に溢れかえっているのだ。
必要最低限の線で描かれた“矢吹丈の最期”は、息を吞む程に美しい。
描き足したくなるぐらいの想いを抑えて、真っ白な灰になったジョーの“白”を強調したラストに、「これ程までに優れたラストがあるだろうか!?」と、満を持した最期の一枚は至極の逸品。
『あしたのジョー』は、あしたへ、そして永遠(とわ)に続いていく不滅の名作なのである。
ありがとう、ジョー・・・。
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